其の弐 異変

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「………一回も勝てなかった。」 とまぁ、時間は過ぎ、8時を回ったところで陸は帰宅準備を始めた。 「まだまだ精進が足りんな。」 「そのうち勝ってやるぅぅ~。」 「その言い方はやめてくれ…。」 何か、無性に殴りたくなるから。 「はいはい。んじゃまた明日な。」 適当な返事を返して、玄関に向かう陸。 「あぁ。またな。」 玄関を出る時に、サボっちゃダメ☆とか言ってきやがったから顔面にコークスクリューパンチをお見舞いしてやった。 「………あいつがいないと暇だな。」 陸はうるさくて変態だけど、一緒にいて退屈しないからいい。 「…にしつも月はいつ見ても綺麗だなぁ……って、あれ?」 俺は月を見ている……が、何か月がおかしい。色が赤やら黒やらに変わっている。 「…どうなってるんだ?」 月食?いや、そんなはずはない。日食と月食が同じ日に起こるなんて…。 そもそも、月食で月は赤くなんてならない。 その光景を見て、先程の陸の言葉を思い出す。 (夕日が黒くなったんだって) 「まさか…な。」 不信感が脳裏をよぎる。 ありえないだろ…。この御時世にさ。 そう考えるものの、不信感は少しも和らがなかった。
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