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靴を履き変え、学校を出た明菜は独り海岸に来ていた。
学校からそれほど距離がない為、よく訪れている。いつもは同じ学校の生徒もいるのだが、時間帯的にすでに帰宅したか、部活に勤しんでいるかのどちらかな為か、明菜ぐらいしかいなかった。
「……海か。あっちの世界の水は全部赤かったから海も赤かったなぁ。」
波打際で呟き出す明菜は何と言うか、良い絵になっていると誰もが思うことだろう。
明菜の容姿はすごく整っており、学校では密かにファンクラブなどができるほどだった。
しかし明菜は物静かで、学校でもいつも一人で黄昏れている様子なので近づこうにも近づくことができないという雰囲気が漂っているのだ。
そんな雰囲気のせいか、明菜は誰とも話さない為、今のように波打際で呟いていると、誰もが絵になると思われるだろう。
「……そういえば、水はあの世とこの世の境界線って聞くけど……それが本当なら………」
そこまで言って明菜は夕日で紅く染まる海水に手をつけた。
「…何も………」
しばらくして海水から手を離し、切なげに呟く。
「起こるわけがないよね。」
はぁっ とため息をこぼし、立ち上がる。
「何を期待したんだか……」
自嘲気味に言い残し、家路についた。
明菜の後ろでは、夕日が一瞬黒くなったかと思うと、すぐに元に戻っていた。
明菜はその光景に気づいていなかった。
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