慟哭

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 知ってた。  泣けないこと。  お前は強がって、弱味なんか少しも見せてくれなくて、本当は弱いくせに、そんな素振り少しも見せなくて、  なあ、好きだったんだよ。  強がりで照れ屋で、それでも人を思いやれて、優しくて、いつでも笑ってて、  どんな人間より綺麗に生きるお前が好きだったんだ。  汚れた俺にも笑いかけてくれて、優しくて、  汚れなんてない笑顔が救いだったんだ。  そこまで考えて気付いた。  彼女の涙を望んだ人間がいなかったから彼女は泣けなかったことに。  彼女はひたすら笑顔だった、涙を見せられないから、だから、笑顔の下で泣いて、  気付けなかった。  気付かせてくれなかった。  君が届かない場所に行ってから気付いた俺はやっぱり汚れた人間で、  けれど汚れていなければきっといつまでも気付けなかったんだ。  好きだった。  伝えられないまま、  君はもう遠い。    あの日慟哭する俺に差し伸べられた手は、もう無い。    
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