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「…そうだ。能力を消したいって、強く思いすぎたのが原因なのか、私との事も全て忘れてしまい、残ったのは、あの子供そのものの性格だけだった。」
幽霊は、相変わらず遠い目をしたままだった。
「…でも、あなたは美優といつかまた、会える事を願っていた。そして、この城に出る幽霊の話を聞いて、私達がやってきた…と。」
「まあな。夢で私の事を意思表示し、ここへ呼んだのも私だ。」
「で…でも、みーちゃんには、幽霊さんに関する記憶はもうないですし…。幽霊さんの姿を見たら、ショックで死んでしまうのでは?」
千里は、遠慮がちに有希達に混じってきた。
「…ああ。わかってるさ。
だから、私は消えるよ。最後の思い出にって事で、この者に会えた喜びで体を乗っ取った事、すまないと思ってる。」
「…まあ、そうゆう事なら別にいいよ。な?」
「はい。幽霊さんも、寂しかったのでしょうし。」
「ま、美優に大きな危害が加えられた訳でもないし…良いんじゃない?」
「…ありがとう。では、私はもう行くよ。じゃあな。」
…そう言って、幽霊は光の射す方へ行こうとした…が、
「…。」
有希の手が、幽霊の和服のすそを掴んだ。
「まだ何か用か?」
「…せっかくここまで来たんだし、最後に私らの願いを叶えて下さい。」
「ゆーちゃん、ナイスですっ。」
「まあ…ちゃんと話し相手になってあげたんだしね。お代はもらうよ?」
「…ったく。わかったよ。ただし、一つだけな?早く私は成仏したいんだよ。」
…だったら、もっと早くしろよと全員はつっこんだが、あいにく、それを口に出している暇はなかった。
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