最後の日が…

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「んじゃあ…美優の記憶、戻す事ってできる?」 「それは無理だ。」 …この間、0.5秒だった。 「何でですか?みーたんの記憶が戻れば、幽霊さんも寂しい思いをせずに済むのに…。」 「…私らのせいで、この者が極度の怖がりになったと言っても過言ではないしな。 …もう、この者を苦しめたくはないのだ。」 幽霊は、苦笑ぎみにそう言った。 「…そっか。」 誰も、幽霊に反論する者はいなかった。 しばらくの沈黙が流れた後、幽霊は光が射す方へと消えていった。 「…行っちゃったね。」 「…ああ。」 「なんだったんでしょうね…。」 3人が幽霊の消えた方を見ていると、後ろから「ん…」と、声が聞こえてきた。 「あ…皆、どうしたの…?てか、何があったの?このフロアに入ってから、私 何も覚えてないんだよね。」 「え…。」 「気がついたら、床に倒れててさ。ゆーれーさんの話、どうなったの?何かお願い事、した?」 「いや…。残念ながら会えなかったよ。」 「え…。ゆーちゃん?」 (…しっ。美優を傷つけないためにも、ここは嘘をついて。) 有希はこそっと、千里に耳打ちした。 (わ…わかった。) 「そっかー。まあ、私は怖いの苦手だし、会わなくて良かったかもね。」 と、笑いながら美優は言った。 「…そういえば、初めの方に聞こえてた声は、誰だったんだろうね?あの人じゃないとしたら…。」 「な…っ!日向、馬鹿!!」 「…声?」 「うん。ここの中から聞こえててさー。」 日向がそう言いながら扉に手をかけた瞬間、 「ひなたん、ダメーっ!!」 「え?」 …千里が止めようとしたが、ダメだった。 「…これ…。」 扉の中から出てきたのは、古ぼけた人形だった。 「…なんか、気味が悪いですね。」 「本当にね。」
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