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ご飯を口にいれながら、美優はふと疑問に思った事を聞いてみた。
「そういやさ、今日はこれからどこに行くんだっけ?」
「えー…っとですね、まずはお城に行って記念撮影をします。それからは班行動になりますので、自由時間になりますよ。」
千里はすかさず、「修学旅行のしおり」を取り出して美優に教えた。
「千里ちゃん、ありがとっ。」
「か…かか、みーたん可愛いです…。」
「ふぁ…。」
幼い顔でニコッと微笑んだ美優は、傍から見ると小学生くらいにしか見えない。
それゆえに、母性本能をくすぐられるのか美優を愛でる女子は少なくない。…千里もそのうちの一人だった。
「いい子いい子~ですっ。みーたん、髪の毛サラサラだぁ…。」
「…。」
…それを面白くないような顔で見ていたのは日向だった。
自分の気をはらすためか、しばらくすると納豆を掻き混ぜながら日向が口を開いた。
「そういやさ、これから行くお城に、幽霊が出るんだって。」
「いや…城だし、幽霊くらいいるだろ。」
呆れぎみに有希が言った。
「いやそれがね、なんかすごくたちの悪いやつらしくてさ…。私ら、集合写真をお城の前で撮るじゃん?だから、写ってるんじゃないかなって。」
「んー。でも、それだと私達が行ったその日にはわからないですよね?幽霊さんが本当にいたかどうか。」
「まあね。集合写真が出来上がるのは結構遅いし。」
「…じゃあ、どうやって幽霊がいるかどうか知るの?」
美優はしょうゆに「んーっ」と手を伸ばしながら聞いた。
傍から見ると、本当に子供みたいだ。
「…はい。」
さっきまで納豆を掻き混ぜていた日向がしょうゆを差し出した。
「ひなたん…ありがとうっ。」
「あぅ…。」
嫌味のこもってない純粋な笑顔でお礼を言われた日向は、何を思ってか赤面した。
「…ひなたん…。私が“ひなたん”って呼ぶと嫌がる癖に…。」
「…っさい!千里は黙ってて。」
日向は赤面しながらご飯の続きをし始めた。
「…で、どうやって幽霊がいるかどうか調べるの?何か方法でもある訳?」
空気になりつつあった有希が、黙々とご飯を食べながら聞いてきた。
「噂によると、天守閣の辺りに出るらしいよ?願いを叶えてくれる、神様みたいな存在なんだって。」
(…たちが悪いから邪険にされてるんじゃないのかよ。)
そんなふうに、皆は内心思っていた。
「んー。よくわからないですけど、その“お願い”って、なんでも良いんですか?」
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