最後の日が…

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「美優、本当は怖いの 苦手でしょ?」 「え…どうしてそう思うの…?」 「わかるよ…。幼なじみだし。…てか、あんた美優じゃないよね?」 …有希は冷たい視線を美優へ向けた。 「え…?どうゆう事ですか?」 「…。」 「美優はさっき言った通り、怖いのが苦手なはずなんだよ。 自分から幽霊の姿を見ようだなんて、思わない。姿を見たら、多分ショック死するんじゃないかな。 それくらい苦手なはずなの。 どこで乗り移ったのかは知らないけど、早く美優の体、返してもらえるかな?…こんなのでも、私の大切な幼なじみなんだよね。」 …有希がそう、言ったと同時に美優の顔が歪んだ。 「まさか、私に気付いてたとはね。」 …そう言うと、美優の中に入っていた幽霊は本来の姿を現した。 黒髪に、青白い肌。絵に描けるような、典型的な幽霊の姿だった。 「そっちが本当の姿よね?…なんで、美優の体を借りたの?」 「…私はただ、寂しかっただけだ。」 「…は?」 「この城には、人が訪れる事はめったになかったんだ。 誰かが来たとしても、まず私の存在に気付く者はいなかった。 …だが、たった一人だけ私が見える者がいたんだよ。 そいつが、この城に“幽霊が出る”と言う噂を流し、多くの者がこの城を訪れるようになった。」 「その人って…?」 「…天野美優(あまの みゆ)。そこにいる、娘だけだ。 この者は、私の存在に唯一気付いた人間だった。 私はその嬉しさに、願いを一つ叶えてやると言ったんだ。…もう、10年も昔の話だがな。」 幽霊は、寂しそうに倒れている美優を見た。 「…みーたんは、何て願ったのですか?」 「“幽霊が見えなくなりますように。”じゃないの?」 有希は、幽霊にまっすぐ向かって言った。 「…その通り。この者は、生まれつき霊感が強く、幽霊が見えると言っては友達が自分から離れていった事を悲しんでいた。 だから、“こんな力 なくなっちゃえば良いのに。”って言ったんだ。」 「…。」 その場にいた全員が、黙って幽霊の話を聞いていた。 「…私は、また一人になる事を恐れた。だが、この者の頼みだったため、受け入れたのだ。 “能力は消えたとしても、記憶は残る。”そう、当たり前のように思っていた…だが…。」 「…記憶も消えたんだよね?」
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