春、桜と共に

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  「申し訳ございません。電波のせいか、あなた様の仰っていることが伺えないのですが…」 あくまで、こちらが悪いと主張しながら返答を待つ。 「………さん…」 ん?なんだって? 「一也さん…………」 ハッキリと聞こえた、と、同時に俺はハッとする。 「………そら?」 聞き覚えのある声。 忘れるもんか。 この電話の相手。 『そら』 大学時代に仲良くしてた後輩である。 「おまえ…なにして……」 そこまで言いかけて俺は事務所を出る。 仕事以外を持ち込むことはしない主義だ。 ロビーまでくると再び話し始める。 「あの………」 「おまえ、なんで普通の電話からかけとると?携帯は?」 「置いてきました…」 「いま、東京にいるのか?」 「はい…」 そこまで聞いてため息を漏らす。 早退決定だな。 「いま何処にいる?」 「東京駅を出て…すぐのコンビニに入りました」 イマじゃコンビニで電話借りれるんだなってへんな所で感心する。 「今から行くよ、たぶん20分くらい、待てる?」 「……はい、でもお仕事…」 「今日は終わり!じゃ、待ってろよ」 そう言うと電話を切って直ぐに上司に早退の旨を伝えた。  
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