巡る季節

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「兄さん、先程の西洋人の方々に出した茶葉はあとどれくらいありますか?」 「結構残ってるあるよ。どうかしたあるか?」 「その方がその茶葉を買いたがっているんです。どうしましょうか?」 耀は壁に凭れ、暫く考えてそして、菊に小さな硝子の箱を用意させた。 「その箱に入る分なら、売っても良いある」 耀は少し怪訝そうだったが、弟の頼みとなれば話は別だった。 菊は嬉しそうに言った。 「ありがとうございます、兄さん」 「この程度しか御用意出来なかったのですが……」 菊は申し訳無さそうに、二つの箱を差し出した。 「無理を言って済まなかった。感謝する」 アーサーはそれを両手で受け取った。その手つきは何か愛しいものを扱うかの様に優しく、顔も穏やかに綻んでいた。 菊は、その様子をぼんやりと見ていた。 翡翠の瞳に架かる金色の睫。少し茶色がかかった、太陽を溶かし込んだ様な眩い金髪。そして何より雪の様に白い肌。 菊は自分のそれと比べてみた。彼と自分との違いは、余りに大きいと思った。 「おい、アントーニョ。金を支払ってくれないか?」 「あ……アーサー悪いんやけど、流石に茶葉を買う分はもう無いねん」 アントーニョが恐る恐る言った。 「そうか……。ん、それなら……」 アーサーは何やらコートの中から、銀色に光るものを取り出した。 そしてそれを菊の掌の中に入れた。 「足りないかもしれないが、その指輪で勘弁してくれ」 そう言うと、アーサー達は店を出て行った。
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