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「何処にも行かれなかったら、僕は餓死してしまうよ?」
仁史は、意地悪にソラの顔を覗き込んだ。
しかし内心、この約束に縛られて死ぬなら、それも悪くないと思った。
「あっ、じゃあ買い物は行っていいよ。それからあの丘もいいわ」
ソラはうつ向き加減の頬を染めて、『約束』を緩めた。
「わかった」
と、仁史は答えて微笑んだ。
ソラは、
「絶対、絶対よ?」
と念を押して、仁史が了承のうなづきを返すのを確かめ、満足そうに帰って行った。
夕焼けが鮮やかに空を染めていた。
それは、仁史にソラの紅潮した頬を連想させた。
恋人ということになるのだろうか、と考えながら、仁史は部屋へ戻った。
もしもそうならば、きっと彼女が最後の恋人になる――。
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