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街外れの丘の上には、一本の大きな木が立っていた。
その木の側で絵を描くのが仁史の趣味…否、日課と言っても過言ではなかった。
木の種類はわからない。しかし仁史はこの場所が好きだった。
広く伸びた枝に厚く茂った葉は、強すぎる陽射しから彼を守ってくれる。
この木の下に居れば、白いキャンバスに反射する日光の眩しさも和らいだ。
上に目をやれば、何にも遮られずに視界いっぱいに空を映せるのも、この場所が好きな理由だった。
否、どちらかといえば、そちらの方が大きな理由で、天然の日傘である大木は、二の次であろう。
もしもこの木がなくても、仁史はこの丘へ通ったに違いない。
そこは、仁史の住居から通える範囲で、一番空に近い場所だった。
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