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赤い闇に飲まれながら、仁史は愛しい名前を呼んだ。 ――ソラ。 声にはならなかった。 けれども、それだけで闇が溶けてゆく気がした。まるで眩い光の差し込んだように。 仁史はもう一度彼女の名前を呼んだ。 ――ソラ。 ソラの柔らかな微笑みが浮かんだ。 ――約束。 仁史を飲み込もうとした赤い闇は、ほとんど薄れていた。 ――守っただろう?約束。 最後の恋人。愛しい存在。 何年も、焦がれていた。数え切れない恋文を描いた。 ――ソラ。 仁史の虚ろな瞳を、瞼が覆った。 そして仁史は、温かな夜空に抱かれるように、安らかに意識を手放した。
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