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仁史に寄って来る女は、いつもそうだった。 学生の頃は、医大生だからという理由で。 就職してからは、医者だという理由で。 女たちは、仁史が欲しいのではない。医大生、あるいは医者の彼氏というステータスが欲しいのだ。 仁史自身には、何の興味もない女ばかりだった。 それでも仁史は、女を拒むことはなかった。 いつかは自分自身に目を向けてくれるのではないか。 そういう気持ちが、なかったと言えば嘘になる。 もしもそうなったならば、仁史の胸の空虚は埋まるかもしれないと思った。 決して叶わぬ想いの苦しさが、消えてくれるかもしれないと思った。 空を見上げるたびに思い知らされる、空との距離。どうしようもなく惹かれる気持ち。やり場のない、想い。 誰にもどうにもできぬものと知りながら、仁史は求め続けた。 仁史の片恋を救ってくれる、誰かを。 何処にもいるはずがない、誰か。
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