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仁史は、重い身体をゆっくりと起こした。
そして、
「どのくらい眠っていたのかな?」
と、尋ねた。
「3日よ」
ソラが泣きそうな声で答えた。
「道理で……」
仁史はまるで何でもない風に言った。
「……身体が痛いはずだね」
ソラは、ベッドの脇に膝をついて、心配そうに仁史を見つめていた。
「雨は?」
仁史がまた尋ねた。
「……3日よ」
ソラが答えた。
「でも、もう止むわ」
仁史は、
「そう」
とソラに微笑んだ。
「ずっとここに?」
仁史が、いつの間にかベッドの脇に移動させられた古い椅子を見て言った。
「心配で……」
ソラが、目を伏せて少し決まり悪げに答えた。
ソラの髪が少し揺れた。
「ありがとう」
と仁史は言って、ソラの柔らかな髪に触れた。
血で汚れたはずの掌は、綺麗になっていた。
ソラが拭いてくれたのだろうと思った。
「帰った方がいいよ」
仁史は窓を見て、夜が近いと判断した。
ソラが、嫌だというように顔を上げて仁史の瞳を見た。
「僕ならもう大丈夫。それより外が暗くなるよ」
ソラは動かなかった。
「また明日、明るくなったらおいで」
「明日?」
ソラが不満げな声を出した。
仁史はソラを安心させるように、優しく言った。
「明日、必ず会おう。だから今日はもう、帰らないといけないよ」
いいこだから、とベッドに置かれたソラの手に口づけると、ソラは渋々といった感じで立ち上がった。
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