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ソラは、涙で頬を濡らして仁史の顔を見た。
「君のせいじゃないよ」
仁史は言った。
「僕が選んだ僕の道だ。しあわせだったよ」
とても、と仁史は付け加えた。
「……いいの?」
ようやくソラが声を出した。
仁史は黙ってうなづいた。
「天へ、行かないの?」
確かめるようにソラが尋ねた。
「行く気があれば僕はもうここにはいないよ」
仁史が答えた。
「君を待っていたんだ――約束だろう?」
仁史は言い聞かせるように、また言った。
「天へ行けば、生まれ変われるのよ?」
ソラが更に確かめるように言った。
「そして、また僕は君に焦がれて生きるのかい?」
仁史がテーブルの上から首を傾げて、ソラの顔を覗き込んだ。
そんなのはごめんだよ、と言って仁史は腰かけていたテーブルから下りた。
床に座り込んでいるソラへ、手を伸ばした。
「僕の気持ちは、受け取ってもらえるのかな?」
とうに答えのわかっている問いを、仁史が投げ掛けた。
ソラが、まだ涙の滲む瞳で嬉しそうに微笑んで、仁史の手をとった。
ソラが立ち上がり、二人は顎と額をくつけるようにして、どちらからともなく笑んだ。
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