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「…おまえ、へんなやつだな」
「そりゃどーも。」
はは、と泣きそうな顔で笑い、それからまた地面へと視線を戻すと、彼はぽつりぽつりと自分の心の内を話してくれた。
仲間達の豹変、マネージャーのこと、周りからの目線の変化……悲しそうに笑いながら、ただただ静かに語っていった。
「…俺、どうすればいいんだろう…?
ブン太を殴ったし、姫神を庇ったあいつらに対しても酷い言葉を投げかけた…今更部活になんて戻れやしねぇ…」
また深くうなだれて、落ち込みはじめたジャッカルくん。
うじうじと悩むのが好きなこだなぁ…答えなんていくらでもあるってのに。
「じゃあ戻らなきゃいいんじゃないの?」
「…え、」
わたしの言葉に大きく目を見開きながら勢いよく顔をあげるジャッカルくん。
おお、目がこぼれそう。
「君は今の部活に不満があって、部のトップである自分以外のレギュラーたちに話をした。しかしそれは受け入れられなかった……つまりは彼らは直す気なんてないんだよ。今の自分達が正義だと確信してる…姫神里菜が絶対の正義であり、彼女の周りにいる自分達もまた正義だってね。」
「………」
「自分達を信じきっている人間に届く言葉なんてありゃしない。それに今のあれらは自分達に…つか姫神さんに対しての否定的な意見を全て叩き落とす典型的なアホだし。
じゃなきゃ数年共に過ごしたきみの意見を無視し罵倒する、なんておかしいからね」
「俺は…」
「切りすててしまえばいいんだよ、彼らを。君の性格なら友人なんて他にいくらでも作れる。彼らにこだわる必要なんてない。テニスだってそうだよ、きみがやりたいと感じるなら、外のテニススクールに行けばいい。レベルも高いから成長も見込めるよ?」
小首をかしげ、満面の笑みでジャッカルくんをのぞきこむ。
…お面じゃ表情なんとわからないだろとか言っちゃだめよ!
「でも………それでも俺は、あいつらとまた……テニスが、したいんだ。」
「…………そう。
なら彼らに言葉が届くまで言い続ければいい。喉が枯れて声が出なくなったら、こうしてまた誰か頼って、もう一回がんばればいいんだよ。」
じゃ、頑張ってちょうだいな。そう言い捨てて(わたしは悪役か)から、ジャッカルくんから離れる。
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