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『お前を待っていたのだが…
見つかると連れ戻されるので、木の中に隠れていたのだ。』
笑って皇子が、此方に体を乗り出すと…
木がぐらりと揺れた。
『うわぁ…っ…皇子!!危ないですよ!!』
張り上げた声に慌てて…
皇子が木の影に隠れる。
『ユマっ…国史の時間を抜けてきたのだ!!!!!…騒ぐな。気付かれてしまうではないか!!!!!』
『…とりあえず…木を降りて下さい。』
俺は、声を潜めて言った。
…清楚で可憐な外見からは、考えられ無い皇子の行動に…
正直…びっくりしていた。
…木から、降りてきた皇子のシルクの真っ白なシャツは、ところどころ泥で汚れていて…
襟元の見事なレースの細工が…
何処かに引っ掛けたのか、解れていた。
その姿は、俺が知っている“王族”とは、かけ離れていて…
その突発的で無防備で、全然気取らない、あの方のお日様のような笑顔に…
俺は“分かりました”…とゆう返事をしてしまったのだ。
あの日から、あの方は…俺の光だった。
あの方に…
もしも、何かがあったら…
そう、考えると怖い…。
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