薄紅色の季節

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「貴一って、あんたの彼氏?」 「!?」 「聞こえてきたんだよ、偶然な。 彼氏と喧嘩でもしたの?」 「彼氏じゃない。 もう、彼氏じゃない...。」 「もう?って事は元カレ? その浴衣はあの旅館のだろ? 友達と旅行に来たの?」 「いや...一人で。」 そう言ってから、ハッとした。 私は一体何を言ってるんだろう。 しかも見ず知らずの人に...。 「ぷっ...くくっ。 一人で傷心旅行? 漫画やドラマの見過ぎじゃねーの?」 口元に手を当ててククッと笑う彼に、私は怒鳴ってしまっていた。 「私だってっ!! 好きで傷心旅行なんかに来てるわけじゃないわよっ!!」 涙は治まるどころか、余計に溢れてくる。 「でも、悔しいじゃないっ!! 志苑は俺が居なくても大丈夫って言われて、傷付いてる所なんか悔しくて見せらんないじゃないっ!!」
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