薄紅色の季節

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彼は本当に部屋まで送ってくれた。 布団に私を降ろすと、何故か自分も側に腰を降ろした。 「あの...送ってくれてありがとう。」 「別に。 原因は俺にもあるし。」 そして続く沈黙。 その沈黙を破ったのは、彼だった。 「なぁ...そんなに好きだったのか?」 「貴一...元カレの事?」 「他に誰が居んだよ。」 「好きだった...かな? だからいろんな物を我慢したし、いろんな癖を治した。 でも、それが逆に強い女だって思われちゃったのかも。」 自嘲気味に笑ってはみたものの、瞳からは涙が零れ落ちる。 「ごめん、なんか...。 こんな話聞いたって、面白くも何ともないよね...。 寧ろ、泣かれた上に愚痴なんてウザいだけだよね?」
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