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海についた。
バーンブレイカーに焼き払われた世界のことを考えると、海と言う水の塊が残っていることが幸いに思えてくる。もっとも流星の暮らす東の国は、森が人間に友好的なので助かっているのだが……。
「君……。なんでついてきたの?」
背後から、感情の込もっていない声が聞こえた。
振り向くと、先ほど会った少年のような子どもが、Tシャツに短パン姿で立っていた。
「よぉ、グランギニョルだっけ?まるで俺が邪魔みたいじゃねぇか。助けて損したぜ」
陽気な態度で、グランギニョルを見下したように言う流星。
「君が僕を助けた……?」
信じられない。グランギニョルはそう言いたそうだった。顔にそう書いてある。
「まぁなんか求めようたぁしねぇよ。それより、大丈夫なんかお前。怪しい奴らが生け贄だとか言ってたけど」
気遣う流星。なんだか放っておけなかった。赤の他人、ましてやどこぞの馬の骨とも知れぬガキだ。だが、放っておけなかった。
「平気。だから帰って……。もうすぐ、奴らが来るから」
グランギニョルは表情を変えずにそう言うと、服を着たまま海へ歩いていった。
「おい!ちょっと待てよ!」
グランギニョルの右手を強引に掴む流星。
「離して」「奴らってなんだ!?まだあんなヤバイやつらに追われてるのか!?お前、命とか危ないんじゃ」「離せ!」
お互いに相手の話を全く聞いていない。
「離しなさい!」
グランギニョルの顔は流星に近づき、彼の目を睨み付ける。
顔が近い。よく見える。やや長く耳にかかる髪。ちょっとつり上がった大きな目。白い肌。小さな鼻。薄紅色の鮮やかな唇。
「男にしとくのもったいないな……」
そんなことを呟いてしまう。なんだか自分が変態みたいだった。
「そう。君が僕を止めるなら、いいよ。君から先に潰してやる」
グランギニョルは右手と右足を前に出し、左手を高く振り上げた。
「へぇ、俺と組み手しようって!?いいぜ、やってやろうじゃん!」
流星は両手の拳を握りしめ、左を顔の前に、右をグランギニョルに突き出した。
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