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さて、大雑把な弔いもすんだところで、この子どもをどうするかが問題となってくる。
このご時世だ。親に連絡しようにも、昔のように電話もなければ、家まで送ろうにも鉄道も動いていない。役に立たなくなった線路は、文字通りの無用の長物だった。
となると、この子どもを連れて家を探さなければならない。大変なことだ。
とにかく、外に出なければ何も始まらないので、その子どもを抱き抱えたまま教会を後にした。
「……」
子どもの目覚めは沈黙から始まった。何も言わず、ただ目を開くだけだ。その深く澄んだ青みがかった黒の瞳は、なんだか見ていると吸い込まれそうな感覚に陥る。
「きみ……だれ…?」
その歪んだ視線で流星を見つめる子ども。アルトの歌手のような声で、ややつり気味の眼を見開き、流星を見つめる。少年とも少女とも分からない。
「ああ、俺は銀河流星。ここから少し離れた田舎間に住んでいる」
とりあえず自己紹介した。
「そう。僕はグランギニョル」
子どもは自分を僕と言ったことから、少年なのだろうが、顔は丸く、目はくりくりした大きな目だった。
というかそもそも、グランギニョルという名前がおかしい気がする。
流星がそんなことを考えていると、いつの間にか目の前に子どもはいなかった。
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