最愛の華

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あれから時間だけが経ち 次第に白いコートに水滴が目立つようになってきた。 雪が降りしきる中 足を取られて滑りそうになる人や転ける人 それらを見て人間であった時の記憶を思い出して苦笑していると ビリビリと嫌な気配が身体中にまとわりついてくる。 「死者か…」 そう呟くとフワフワした白い帽子が特徴的な金髪の少女が 何かに追われているのか 大きなビルと二階建ての一軒家の間にある細い路地から慌てるように飛び出て来た。 その直後だ ノコギリのような牙をギラギラさせて 黒い男が飛んでくる。 男はそれが飛んでくる勢いに任せ 思いっきり爪を立てた。 するとバターを裂くように黒い男の身体は裂け 地面に落ちると同時に灰に変わった。
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