最愛の華

8/21
前へ
/22ページ
次へ
アレからレンは何度か入退院を繰り返し、会える機会が少なくなった。 両親や、彼女の兄には友人として挨拶を交わし、普通に話せるくらいに慣れてきた。 ある朝、彼女の家に見舞いに行くと 彼女から思い掛けない一言が上がった。 「ねぇ、私遊園地に行きたい。」 彼女の顔は真剣そのものだった。彼は拒否しようとしたが彼女の顔はそれを許さなかった。 「別に構わないが…。」彼がそう濁すと、彼女はにっこりと笑って 「約束よ?」と言って小指を立てた。 ルイは、小さな小指に自分の太い小指を交えて 「約束だ…。」と、牙をチラつかせてニヤリと笑った。 レンは、クスクス笑うとそのまま寝りにおちた。どうやら薬が効いたようだ。 「おやすみ。」 彼はそう言って布団を掛けると霧のように消えた。 まるで、冬の日の夢のように…。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加