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彼の頭の中では明日から食べる物や、何日暮らして行けるかなどを考え、毎日使われていなかった脳が、ぐるぐると急速展開して目を回していたのだ。
それほどお金という代物は彼にとって、貴重な宝物だったのだろう。
そんな頭がイカれそうなぐらいの状態だったのが裏目に出たのか、彼は徐々に近付いてくる何者かの気配に気が付けていなかった。
山のような財宝でも見るかのように、不屈な笑みを浮かべながらお金を見つめていた彼とは違って、その徐々に距離を近付けてくる者は、彼の持つお金を見て安堵の溜め息をついた。
「見付けたわ」
その存在にようやく気が付いたのか、青年はお金を一心不乱に懐に隠し、怯える顔を見上げて声が聞こえた方を凝視した。
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