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いったいいつの傷心なんだか。
父が死んだのはずいぶん前だし、育児の間に恋愛なんかにかまけている暇などあり得なかったわけだし、考えられるのは……少し遅めの傷心旅行だろうか。
とはいえ、父が死んだのもずいぶん遠いはなしで、そんな……遅れてきた傷心を癒すために世界一周に出られてはこちらとしてはかなり迷惑だったのを覚えている。
受験シーズンだというのに家に急にひとりきりで居らざるを得なくなり、勉強に身が入るわけもなく、落ちたかとさえ思った高校受験。
いくら推薦入試だからといって必ず合格するとは限らない。
そんな崖っぷちな状態で出逢ったのが、彼こと悠一だった。
受験当日、校舎内で受験会場がわからず狼狽しているところへやってきて案内を買って出てくれた。
その時、一目惚れしてしまい、この人がいるなら意地でも受かりたい、と不純な動機が生まれてしまい、頭の引き出しを開け尽くしてテストに望んだ。
結果はご覧の通り合格。
しかし、当時の自分がいかに浅はかで考えなしかと思うと羞恥に死んでしまいそうだ。
今回はたまたま二個上というわけで一年間は同じ学舎で生活できたが、もし当時悠一が三年だった場合、……考えるのも恐ろしい。
浅はかな自分に泣きそうだ。
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