疾走

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 田川君は、中学校の被服室のマネキンを1体盗んだ。 理由は友人との賭けに負けて、「マネキンを持って走りながら校舎を1周せよ」との命令が下ったからだ。 校舎内のA、B、C、Dの4地点に、1人ずつ見張りが配置されているので、田川君は誤魔化さずに罰ゲームを実行せねばならなかった。 マネキンは想像以上に重く、担いで走るのはある程度の体力が必要だった。 『教師に見つかったらどうするんだよ…』 田川君がもし教師に見つかったら、薄情な友人たちは逃げ帰ってしまうだろう。田川君は賭けに参加したことを後悔した。 A地点が近づいてきた。友人が「頑張れー」と他人事のように手を振った。 少し腹が立った田川君がマネキンを担ぐ手を強めると、全力疾走で駆け抜けた。「うわあ!!」 圧倒されたのか、友人は腰を抜かした。 A地点が見えなくなると、田川君はスピードを下げた。それにしても重い。いい加減、この馬鹿げた罰ゲームを止めたかった。image=328567042.jpg
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