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「気味が悪いよ…」
池田は呟いた。
「何が…?」
橋本が聞き返す。
「俺の住んでる団地だよ。マジ。ホントに気味悪い」
池田は3回ほど、気味悪いと繰り返した。
彼が言うには、自分の住む団地で、不可解な現象が何度も起こっているというのだ。
「あそこはヤバい」
気分を落ち着かせるためかタバコをポケットから取り出し、自分の身に起こった体験談を話し始めた。
引っ越して間もない頃、池田は早朝からジョギングをするために階段を小走りに降りていた。
3階から2階に降りるその瞬間、隅に髪の長い女がいることに気づいた。その女は、ずっと壁を見た状態でその体勢を保っていた。変だな、とは思いつつも、そのまますれ違おうとしたら、〝帰れ〟と聞こえた。振り向くと、女はいなかった。
池田は、急に背筋が寒くなった。
アルバイトの帰り、3階から 〝おーい〟と声をかけられた。見上げると、初老男性が窓から身を乗り出そうとしていた。
「危ないですよー」
声をかけた瞬間、妙なことに気づいた。
男性の体が、透けていたのだ。角度的に見えるはずのない電灯が見えていた。
〝何でもないよ〟
いつの間にか、男は消えた。 後から考えると、あの部屋に現在、住人はいなかった。
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