疾走

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「田川!お前にしては頑張った方じゃないか!」 見張りの友人が口を開いた時には、もうD地点を過ぎていた。 「…ど、どうだ…俺もやるときゃやるんだぜ」 友人が駆け寄る。 「にしてもこのマネキン、ホント重…」 「た、田川お、おまっ…」 「うん?どした?」 「来るな!!」 「なんだよ。もう罰ゲームはいいだろ」 「お、お前、気づいてないのか…?」 「は?」 「…お前の担いでるの、よく見てみろ…」 田川君はマネキンに視線を向けた。 首がなかった。いや、首のない型のマネキンなど、被服室にいくらでも並べてある。だから最初、田川君はそれをマネキンと思い、罰ゲームを実行した。 だが、田川君の担いでいるソレは、マネキン人形ではなかった。 首がスッパリなくなった、人間だった。 つまり田川君は、コレを担ぎながら校舎中を疾走していたのだ。
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