苦悩

2/5
前へ
/171ページ
次へ
「今度はなんだよ…」 橋本が溜め息を漏らす。 「それが…」 池田もそれに合わせて溜め息を漏らす。 以前の『団地』で〝霊道付き〟の部屋に住んでしまい、数々の怪奇現象に巻き込まれた池田だが、今回も〝そういう類い〟に悩まされていた。どうやら池田は、〝あっち側〟の住人に引っ張り込まれる傾向にあるらしい。 「あのさ、池田。冷たい言い方になるだろうが、俺は坊さんじゃない。そっち系の話はもう、うんざりだ。いい加減お祓いでもしてもらえよ」 「んなこと言わないでくれよ。あの時はお前のお陰で俺は助かったんだよ。もしあのまま、あの『団地』に住んでたら俺は死んでたかもしれない…」 「あの時は俺も必死だったんだ!幽霊に『消えろ』とか、今思うと俺も危なかったかもしれないんだぞ!」          さすがに自分でも言い過ぎだと気付き、橋本は池田を見る。 「悪い…そこまで言うことないよな。…謝るよ」 池田は無言だった。
/171ページ

最初のコメントを投稿しよう!

358人が本棚に入れています
本棚に追加