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「今度はなんだよ…」
橋本が溜め息を漏らす。
「それが…」
池田もそれに合わせて溜め息を漏らす。
以前の『団地』で〝霊道付き〟の部屋に住んでしまい、数々の怪奇現象に巻き込まれた池田だが、今回も〝そういう類い〟に悩まされていた。どうやら池田は、〝あっち側〟の住人に引っ張り込まれる傾向にあるらしい。
「あのさ、池田。冷たい言い方になるだろうが、俺は坊さんじゃない。そっち系の話はもう、うんざりだ。いい加減お祓いでもしてもらえよ」
「んなこと言わないでくれよ。あの時はお前のお陰で俺は助かったんだよ。もしあのまま、あの『団地』に住んでたら俺は死んでたかもしれない…」
「あの時は俺も必死だったんだ!幽霊に『消えろ』とか、今思うと俺も危なかったかもしれないんだぞ!」 さすがに自分でも言い過ぎだと気付き、橋本は池田を見る。
「悪い…そこまで言うことないよな。…謝るよ」
池田は無言だった。
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