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「池田…」
「…いや、俺の方こそゴメン。俺の問題なのに、他人を巻き込むのはダメだよな…」
池田はうつむいた。
「…話だけは聞いてやる」
「本当か?」
池田が顔を上げる。
一週間前の話になる。池田が駅のホームで電車を待っていると、前にいた男が突然ホームから飛び降りた。既にアナウンスは鳴っていたので、電車は男の上を通過した。
池田は叫びそうになったが、周りの人々は全く気づかずに電車に乗り込んだ。池田はその電車には乗らなかった。死体を確認するためだ。程なくして、電車は動き出した。池田が下を確認する。そこには何もなかった。
そして町を歩いていると、道の真ん中でこちらを見ている者がいた。
目をそらすと、
「シカトしてんの?シカト」 と言われた。
見ると、声の主は池田を睨んでいた。池田も睨み返すと、そいつの体を、歩行者たちがどんどん通り抜けて行った。
幽霊だったのだ。
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