第一章

2/4
前へ
/12ページ
次へ
競馬新聞片手にコーヒーを飲むのが私の朝の日課だ。 ここは都内某所にある雑居ビルの一室、私の職場兼自宅だ。 アパートは昨年末に家賃滞納で追い出され、それ以来ここで寝起きしている。 今日のレースの予想をしながら過ごしていると、物凄い勢いで私の唯一の部下である咲夜 恵夢(サクヤ エム)が部屋の中に飛び込んできた。 『チョット!何呑気に競馬の予想なんかしてるのよ!たまには依頼人でも探してきたらど~なのよ!そんなだからアパートも追い出されるのよ!このままじゃここの事務所だって追い出されるわよ!』 はぁ…。朝からまたこれかい? 毎朝毎朝よくも文句ばかりでるもんだね。 『第一、なんでいつもそんな格好してるのよ。元は悪くないんだから、もっと女らしい格好をしなさいよ。』 そうそう紹介が遅れた。 私は美咲 刹那(ミサキ セツナ)。性別は女だ。 探偵なんて商売をしている。 好む服装は黒のパンツスーツ。 探偵としての収入はほぼ0だが、亡くなった両親の遺産で最低限の生活は出来ている。 恵夢は名前はエムだが本人は間違いなくエスである。 『なぁ、エム。毎朝元気だな。そして毎日同じ事ばかり言っていて飽きないか?私は飽きたぞ。同じ言うなら違う事にしてくれ。それに依頼人は探しに行って簡単に見付かるわけじゃないし、その辺に落っこちてモノでもないんだぞ?わかるか?』 エムを諭す様に話す私の手から競馬新聞を奪い取り、そのまま丸めてごみ箱に投げ捨てながら、エムは深いため息をついた。 .
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加