プロローグ

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―――耳障り。 ―――ああ、ああ、うるさいうるさい。 心ない言葉が整然と並ぶ無機質なデスクだとか 集団に生まれる一面的な偏見だとか それによって始まる紛争だとか 自分中心の中身のない会話だとか 昨日みた夢云々だとか まぁまぁ、この世界がいつからどうしてここまで堕落したのか、私には分からないけども、とりあえず率直な感想を述べると、“耳障り”。 ここまでノイズだらけの世界はかえって珍しい。ああうるさいうるさい、馬鹿馬鹿し過ぎて耳がおかしくなりそうだ。 ―――必要のないものに限って盲目的に追い求める。 人間とは実に不可思議難解な生き物だ。 同時に、そんな人間の馬鹿さ加減が愛らしく思える私はどうかしているのだろうか。愚かで、不純で、理解ができない……だから愛しく興味深い。結局この矛盾が、私が地球を生かしたままにしている最大の理由である。 この妥協した感じが人間臭くて、いささか不快感を覚える。そう自分を嘲笑しながら街を闊歩する。 自分ひとりで成長したかのように、聳え立つビルを横目に私はなお、闊歩する。 目指すはあいつがいる場所。 ―――ふん、今回はどんな手で私に食ってかかろうというのか…一応期待はしててやろう。 辿り着いたのは、街の高度な発展に置いてきぼりにされたかのような、哀愁漂う廃墟同然のゲームセンター。 ―――さぁ、今回はどんな策を練ってきたのだろうか… 私は勢いよく扉を蹴りとばした。 .
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