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手始めに、肩で息をし始めた一人の手首に手刀を入れ、得物の鉄パイプがこぼれ落ちる。
彼はそれが地に落ちる前に拾い上げ、後ろに飛び退くと中段に構える。
体育の図説にそのまま載りそうな、隙のない姿勢。それでいて迫力というものがあまりにも感じられないから、それが逆に怖い。
「なんだぁ、こいつ全く恐くねぇぞ! 今がチャンスだ行けぇ!」
おぉ、彼の無言の圧力はヤンキーには通じないらしい。
ここが勝機とみたらしく、一気呵成に攻め掛かるヤンキー共。
釘バットやら鉄パイプやら木刀やらナイフやらドライバーやら石ころやら……もう何でもありだ。
彼はその一つひとつを受けて、あるいは避けると、武器を弾いて、無防備の腹を軽く突き、失神させる。その繰り返しだ。
彼曰く、水月という人体急所の一つを狙っているから怪我はさせていないらしい。正直よくわからんけどね。
瞬く間に崩れていく取り巻き。高みの見物をしていたドレッドも焦りの表情に…………
「………………」
「………………」
…………はぁ、そう来ますか。
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