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「待ちやがれ神内、こいつを見るんだな!」
彼が木刀男を地に沈めたところで、ドレッドが意気揚々と叫んだ。
残る二人に注意を払いながら振り返った彼が見たのは、ドレッドに捕まった……俺だ。
いや、ね。目が合ったからって勝手に人質にするのはどうかと思いますよ?
「こいつの命が惜しかったら、下手に動くんじゃねぇぞ、神内?」
首を締める形で押さえられ、更には大振りのナイフが視界の端にちらつく始末。
冗談抜きで、これはまずい。
流石の彼も動きを止め……ない?
何で振りかぶって、え、ちょっと待っ――
「いや待て、神内、ちょっ、何でおま、だから待ちがばらぁっ!?」
いやマジですかって倒れるっておわぁ!?
本当に、一瞬のことだった。
幸いなことに、クッションもといドレッドのおかげで身体は無事だった。
そのドレッドはというと、俺の下で白目を剥いて伸びている。
ぱっくり開いた額からは、赤筋。
とりあえず立ち上がって土埃を払うと、彼を――素晴らしいフォームで鉄パイプをドレッドの額を射抜いた、神内大貴を見た。
「……投げた?」
無言で頷く彼。
「……俺を助けるため?」
再度。
「……あの人が鉄パイプ喰らって平気かどうか、考えた?」
この時彼の視線が泳いだのは、きっと気のせいだ。
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