希積村へ

2/12
前へ
/117ページ
次へ
次の日… 二人は何度も電車やバスを乗り継ぎ、山奥の希積村を目指した。 辺りは大きな山と、鬱蒼と茂った森、後は延々と続く一本道だけだった。 「バス停からずっと歩いて来てますけど…タクシー捕まえた方が良かったみたいですねι」 荷物の殆どは涼輔が持って居るのだが、さすがに一時間以上も歩き続ければ、不安や不満だって出て来る。 「バス停付近には何も無かったからね。…乗るなら駅に戻るしかないよ?」 駅まで戻る事を考えると、一歩でも前へ進んだ方が良いと判断したのか、なつめは無言のまま歩き続けた。 更に歩みを進めると、石の側の古木に 【希積村…右に1km】 【吉馬村…左に2km】 と、書かれてあった。 「漸くゴールが見えて来たねι」 「そうですね…あと…Σっ!!」 言いかけて立ち止まり、疼くまったなつめに、涼輔は慌てて駆け寄った。 「大丈夫?どうしたの?」 「っ…大丈夫ですι…ちょっと靴擦れ起こして…」 涼輔はなつめを石に座らせ、靴を脱がせた。 山奥らしいので、歩き易い様にと、スニーカーを履いては来たが、大分前から痛みを我慢していたのだろう。 踵の部分と、白い靴下が赤黒く染まっていた。
/117ページ

最初のコメントを投稿しよう!

49人が本棚に入れています
本棚に追加