ある冬の円舞曲

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降りしきる雪の中、僕は歩いていた。 理由も、行き先もない。 ただ、歩いていた。 僕は今年大学を卒業して、四月から営業の仕事に就いた。 そして、しばらく付き合っていた彼女と結婚をした。まあ、人並みに幸せな生活だったと思う。 だが、ほんの一週間前の出来事だった。 元々仕事での成績はあまり良くは無く、上司に怒られることも多々あった。 それでも、なんとか大丈夫だろう、なんて甘い考えを持っていた。 その結果、一週間前に担当の大口の契約を切られてしまい、上司からクビを言い渡された。 妻も前から浮気していたらしく、僕が会社をクビになったことを知ると、これを期にとばかりに出て行ってしまった。 ふと後ろを振り返る。 僕が歩き、確かに付いた足跡。 僕が歩んだ軌跡。 雪が、それを少しずつ曖昧にしていく。 いずれ全て埋め尽くされ、消えてしまうのだろう。 まるで、僕という人間など、最初からいなかったかのように。
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