ある冬の円舞曲

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 ふと気が付けば、いつのまにか駅前に出ていた。今日はいつもにも増して周りはカップルばかりだった。 ああ、そういえば今日は12月24日、クリスマスイブだったか。 間違いなく今年は人生で一番最悪なクリスマスになりそうだ。 今はあまりこんな人の、まして幸せそうな人の多い所にはいたくなかった。 一秒でも早くこんな場所から離れよう。 そう思って少し早足になる。 駅を通り過ぎ、しばらく歩く。 そこの角を曲がれば多分人も減るだろう。そんなことを考えていた時だった。 肩にドン、という衝撃。 転びそうになり、慌てて体勢を立て直す。 どうやら人にぶつかったらしい。 早くこんな場所から抜け出したかった僕は、そのまま立ち去ろうとする。 だが「おい」という声と共に肩を掴まれ、それはできなかった。 振り向いて見ると、見るからにガラの悪そうな3人組だった。 「ぶつかっておいて謝罪も無いってどういうことだよ」 一番左にいた体格の良い男が口を開く。 「・・・すみません」素直に謝ってはみるが、恐らく意味は無いだろう。 3人の雰囲気から察するに、多分誰かにむしゃくしゃをぶつけたいだけだろう。 「謝って済むと思ってんのかよ。」 予想通りだ。右の男など、ニヤニヤを隠しきれていない。
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