ある冬の円舞曲

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どうやら気を失っていたらしい。 辺りはもう薄暗くなっていた。 痛みで軋み、冷え切って感覚も無い手足でなんとか立ちあがり、よろよろと歩く。  その後の事はあまり覚えていない。 宛てもなく歩き続け、気が付いたら以前の彼女の家の前にいた。 無意識の行動とはいえ、この時初めて僕は自分という人間が本当に嫌になった。 自分から彼女を裏切っておいて、自分が窮地に陥ったら都合よく彼女にすがるのか、と。 その時、ガチャリと玄関のドアが開く。 ビクリとして踵を返そうとするが、少し遅かった。  「あら、健ちゃん?健ちゃんじゃない。」 振り返ると、彼女の母親がいた。彼女の母親とは、家に遊びに来た時に何度か面識がある。優しい人で、とても良くしてもらった。 だが、まさか覚えているとは思わなかった。  「あら、怪我してるじゃないの!ほら、上がって行きなさい。」  「いえ、いいです。」  今は、この家には入りたく無かった。 入ってしまったら、もう自分が許せなくなりそうで怖かった。  「だめよ、もうフラフラじゃないの。その辺で倒れられたら、おばさんも寝醒めが悪いでしょう。」 そう言って半ば無理やりに家の中に引っ張り込まれた。
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