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その日の昼休み、久世に昼食に誘われた。
断る理由なんてない。それどころか、まったく恐怖せず、普通に接してくれることに喜びを感じている自分がいる。
記憶をなくして以来、こんな風に同年代の男子生徒と過ごすのは初めてのことで、俺は内心戸惑っていた。
「新山の弁当は母ちゃんに作ってもらってんの?」
「いや、俺親いないから……」
「あー、もしかしてまずいこと聞いちまった? もしかして記憶喪失ってのはその辺が原因だったり?」
「うん、まぁ……」
俺の話を信じてくれる……これも初めて。
目の前の男は、他の連中とはまったく違う。
「今日の弁当は……妹が作ってくれた」
気づけば、自分から話しかけていた。
「妹がいんだ。年はいくつ? 名前は?」
「一つ下。名前は千秋」
「新山千秋?」
「いや、俺を引き取ってくれた人の娘だから義理の妹で、名字は風見」
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