比泉紫苑の1日

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 その後、比泉は木の上に向けていた指を今度は下に下ろした。  そこには更にもう一匹のネコ。 「近所の主婦から食べ物をくすねていくネコがいるから探し出してなんとかしてほしいという依頼を受けてな、犯行現場から下にいるオスネコを尾行してなんとかこの場所を見つけたのはいいものの、俺一人では木の上のネコまでは手が届かないのだ」  つまり、日記帳もどきに書いてあった尾行の相手は木の下にいるネコだったってことか。  紛らわしい書き方しやがって、本気でビビったじゃねえか。  木の上にいるネコと下にいるネコは夫婦かなにかなのだろうか。 「でも、お前ならあのくらいの木、軽々と登れるんじゃないのか?」  校舎の屋上から迷いなく飛び降りるような奴だし、高所恐怖症ってことはないだろう。
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