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桜舞い散る暖かな春、私、水無月優羽は中学生になった。
新しい生活への高揚はもちろんだけど、この進学は私にとってとても喜ばしいこと。なぜなら――
「優羽、久しぶりだな」
『お兄様、お久しぶりです』
今日からは、今は訳あって離れて暮らしている望お兄様と同じ学校に通うことが出来るのだから。
「大きくなったな優羽。セーラー服がよく似合ってる」
『ありがとうございます』
いつものように、昔彼に教わった腹話術でお礼の言葉を述べると、なぜかお兄様は顔をしかめた。
「やっぱり、まだ一人じゃ会話が出来ないんだな」
『……はい。お母様となら、簡単な挨拶くらいは出来るようになったのですが』
「まあ、焦ってもしょうがない。ただあまり多用はするなよ。他の生徒に話し掛けられた時も、出来る限りボディランゲージで対応した方がいい」
『はい。わかっています』
「無理に友達を作れとは言わないし、なにかあったら必ず俺を頼れよ?」
『はい。でも、あまりお兄様に迷惑はかけないようにします』
「…………そうか」
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