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そう呟いたお兄様の表情は、どこか寂しそうに見える。
自分はなにかおかしなことを言っただろうか。
『それでは、入学式がありますのでこれで』
「ん、ああ。頑張れよ」
お兄様に頭を下げ、その場を後にする。
それから入学式があり、始まった新しいクラスでの生活も、始めの内は問題なく過ごすことができていた。
平穏。それが崩れ始めたのは、四月も終わろうとしていたある日の昼休み。
クラスメートの男子に校舎裏に呼び出された時のことだった。
「俺さ、優羽ちゃんみたいな女の子がめちゃくちゃタイプなんだよね。守ってあげたくなるっていうかさ」
私を呼び出した男の子は、会うなりそんなことを言ってきた。
「彼氏とか、好きな人とかっているの? もしいないなら俺と付き合わない?」
中学に上がったばかりの私は男の子を好きになるとか付き合うとか、そういうのがまだよくわからなくて、とても戸惑ってしまっていた。
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