アイドルの憂鬱

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 昼休み、私は学園の中庭で下駄箱に入っていた手紙を読んでいた。  思った通り、そのどれもが交際を要求するラブレター。  その中には知り合いの男子もいれば、まったく面識のない男の子もいる。  中には差出人の名前のところに『姫百合蓮ファンクラブ会員No――』などといった文章も……これを見て私が喜ぶと思ったのかな…… 「はあ、男の子ってよくわかんないよ」  そもそもバレンタイン当日に男の子のほうから告白って、例え成功したとしても普通チョコレートは用意してないんじゃないかな。 「辛気くせぇ顔して、珍しいな。なんか悩み事か?」  芝生に座りこんでいた私を背後から見下ろすように話しかけてきたのは幼なじみの水無月望(みなづきのぞむ)。 「まあ、そんなところかな。ねえ、望はチョコレートもらえたの?」  あまり深入りされるのは避けたかったので、話を変えようとたずねてみると、望は無言で手にぶら下げていた大きな紙袋を掲げて見せた。  あの中身は全部チョコレートってことか。相変わらず嫌みなやつーっ。
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