アイドルの憂鬱

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 私は多少の苛立ちを孕んだ目で望を睨みつけてみるも、望はまったく臆することなく、あろうことか私の隣に腰を下ろし、もらったチョコレートをその場で食べ始めた。 「ちょっと、なんでここで食べるのよ。それもそんな豪快に……食べるにしてももう少し味わっていただきなさいっ!」  包み紙をはがしては次々とチョコレートを口の中に運んでいく望。  どれが誰からもらったものなのかちゃんと把握してる……わけないよね、望だもん。  ほんと昔からデリカシーないんだから。 「俺がもらったもんなんだからどうしようが勝手だろうが。昼飯代わりだよ」 「お昼ご飯食べてないの? なら食堂なり購買なり行ってくればいいじゃない」 「今から行ってる時間なんかねえっての」  中庭から見える校舎に貼り付けられたアナログ時計で時間を確認してみるも、昼休みが終わるまではまだ二十分ほどの時間がある。 「時間ないんだから早く話せよ。なんか悩んでたんじゃねぇのか?」 「えっ……」  望の行動と言葉の意味を理解するのに、私は数秒の時間を要した。  つまり、望は私の話を聞くために食堂に行くのを諦めて代わりにチョコレートを頬張ってるってこと?  ………………まったく、ほんと昔から変わらないな。
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