アイドルの憂鬱

6/7

325人が本棚に入れています
本棚に追加
/57ページ
 ふと、手元にある数通の手紙の一枚が目に止まる。 『ミスコンの時の笑顔がとても素敵でした』  素敵なんて言われる資格ないのに、だって私の笑顔は………… 「……なあ、蓮」  文章を見るたびに沈んでいく私の心を引っ張り上げるかのように、隣に座っている望から、真剣な眼差しで声をかけられた。 「意味なんて、わからなくてもいいんじゃねえかな」 「どういう……こと?」 「だってさ、俺だって詳しくはわかんねえから。なんで好きになったのかとか、どういうところが好きなのかとか」  実を言うと、望には好意を寄せている女の子がいる。  その子は私も知ってる人だったりするんだけど、今はその話をする時じゃないかな。 「どこが好きなのかもわからないのに、『恋』ってできるの?」 「上手く言葉にできないけどさ、理屈じゃねぇんだよきっと。いつか、壁をぶち破って蓮の内側まで辿り着くことができる、そんな男に出会ったら、わかるようになるかもな」
/57ページ

最初のコメントを投稿しよう!

325人が本棚に入れています
本棚に追加