アイドルの憂鬱

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 放課後……  あの後、昼休みが終わってしまった為に望とは中庭で別れた。  放課後まで付き合わせてしまうのはさすがに悪いし、夏紀は風紀委員の仕事があるから今日は独りぼっちの帰宅。  私は生徒会に所属しているのだけど、特にこれといったイベントもないこの時期は帰りが遅くなるほど忙しくはない。  少し寂しさを覚えながら校門に視線を向けると、そこでは、一人の女子生徒が男の子にチョコレートが入っていると思われる包みを手渡していた。  あんな目立つ場所で、勇気あるなー。  私も来年は、好きな人にチョコをあげたりとか、できるのかな…… 「あの、すみません」  物思いにふけっていると、すぐ隣から声をかけられた。  声をかけてきたのは紺色のブレザーを羽織った男の子。この制服、夏紀が通ってた中学校のやつだ。 「姉の忘れ物を届けに来たんですけど、風紀委員がどこで活動してるのか教えていただけませんか?」 「あー、風紀委員ならあっちの校舎の三階だよ」  紺色ブレザーの男の子は「ありがとうございます」と言って頭を下げると、足早に校舎に向かって走って行ってしまった。  うーん? 夏紀と同じ中学校、姉の忘れ物、風紀委員……なるほど。 「そっか、あの子が……」  私の頬に冷たい風が吹き付ける。春はまだまだ遠い。  この先、まさか望の助言通りになってしまうなんて、この時の私にはまったく予想できていなかったのでした。 END
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