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「あんた、家族はいるのか?」 「シュツットガルトに妻と子供がいるが、それがどうした」
「・・・・少しは人間らしいところがあるんじゃないかと思いましたが。気のせいでしたな」 「艦長。何が言いたい」 「中佐。私は祖国のために存分に戦えたことを誇りに思っております。海の藻くずと決まった今も後悔などありません。ただし―――一つだけ不満なことがあるといえば、こんな最後の刻ですら家族のことを思い出せない、あんたのようなくそ馬鹿と同じ棺桶に入らなけりゃならないってことですよ」 「その発言を取り消せ、艦長。国家の大義と家族では比べくもない」 「くだらないですな。どんなに息まいたところでヒトラー殿の帝国はもう終わりです。 おたくらの妄想に付き合ったおかげで俺の祖国も俺の海軍もこのざまだ」
「黙れ」 「俺の子供たちが二度とハーケンクロイツを見ないですむための運命なら沈む甲斐もあるってもんですよ」「だまれッ、だまれえっ!」 〈バンッ〉
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