歌姫

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 夜。明日は学校休もうかな…とか考えながら、また読書。しばらく本を読んでいると、携帯が叫んだ。 「みんな~!おっは」  ピッ。  今はそんな気分じゃない。…次にかほりに頼む時は、着信音をマトモな物にして貰おう。  カナメの元に来たメールは、カラオケ仲間の…ケイトから。いつもならばこの時間から、本とメールを行ったり来たりなのだが…名前を見た瞬間にムシャクシャしてきて、中身を開きもせず閉じる。電源を切る。 「…寝よう」  何故、自分があの天才と比べられないといけないのだろうか?  学年中から「歌姫」とあだ名される友人、ただそれだけの話で、彼女は一切悪く無い。分かっていても、なんだかムシャクシャする。  カナメが眠りに落ちたのは、それからすぐの事だった。 「…というわけで、新一年生歓迎パフォーマンス、ソロパフォーマンスをしてくれるのは三組の幹ケイトさんに決まりました」  翌日の朝、HR。ちゃんと話を聞いていないまま帰ったが…どうやらカナメは、新一年生歓迎パフォーマンスの見せ場を演じるハメになっていたかも知れないみたいだ。  新一年生歓迎パフォーマンス。たいそうな名前だが、言ってしまえばただの歓迎会。毎年入学式の後に、新二年生が新一年生のためにクラスごとの出し物をするのが恒例なのだが…今年は例年と違い、桜かほりプロデュースの元に新二年生が結束して、大きなショーをする事になっているのだ。 「ま、もう関係ないか…」  あんなことでムシャクシャするなんて、昨日は私がどうかしていたのだ。カナメは自分にそう言い聞かせ、本を鞄から出そうとして… 「みんな~!おっは」  ピッ。  ケイトからメールが来た。マナーモードを忘れてしまったせいで、すっかり恥さらしだ。…昨日のこともあってか、教室中から視線を感じる。 「か、かほり!設定変えて!今すぐ!」  焦りに焦って、自分で機械オンチをカミングアウトしてしまったカナメ。そんな散々なカナメに、かほりはトドメの一言を決める。 「ね?カワイいでしょ?」 「だな」  カナメは再び、教室から逃げ出した。
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