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「これ、聞いて」
カナメのパソコンを勝手に起動し、メモリを差すケイト。カナメは聞く。
「何のつもりよ?」
「私があなたに代役を頼んだのは、間違いじゃ無かったんだって思えた理由の一つよ」
そういって、ケイトはパソコンの画面を指差す。そこに映っていたのは…、
『幹さん、どうしました?』
『いえ…この歌、難しいなと…』
『ケイちゃんファイト!私渾身の選曲だよ?気合い入れていこ~!』
『桜さん、騒がない』
『すいません…』
音楽室でのケイトの練習風景。カメラを持っているのはかほりのようだ。
「これ、いつの?」
「昨日よ…私がこうやってかほりにカメラ回して貰っているのは知ってるわね?」
「うん…」
ケイトは、自分の練習の様子を記録に残し、後でそれを見ながら反省点を探すといった練習方法をとっている。それぐらい歌が好きなのだ。
「で、問題はここ」
早送り…映像の最後の方で、ケイトが「光の中で」を通して歌っているのだが…、
「…下手でしょ?」
「うん…」
ケイトが苦手な歌…聞いた歌はとりあえずみんな歌えるカナメには、理解しがたいものであった。
「わざとでしょ」
「違うのよそれが…私、苦手な歌はとことんダメで…」
そしてカナメは思い出す。
そういえばケイトは、カラオケでかほりが歌えと選曲した曲を歌ってみたら、かなり下手だった。かほりがその日以来そんな事をしなくなったおかげで、すっかり忘れていた。
「…分かった?私は好きな歌以外は歌えないの。でもカナメはどんな歌でも歌える…それに課題曲が『光の中で』なのって、絶対に誰かさんの後押しでしょ?」
…かほりの考える事はよく分からない。
「信じられないかも知れないけど、私はあなたの歌がとっても好き。かほりが何をしたのか聞いて怒ってたんだけど…もうすっかり癒やされちゃった」
「そ、それは…」
「ともかく、改めて頼むわ。私の代わりに歌って。頼めるのはあなただけなのよ!」
ケイトの真剣な目。その目力に押されて、カナメはついと目を逸らす。
「で、でも…」
「お願い!」
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