一、きっかけ

6/7
前へ
/33ページ
次へ
「んぁ?」 いつの間にか寝ていたらしい しかしまだ暗い むくりと布団から起き出し、障子を少しだけ開け、外を見てみる 「あ…あれって」 昨日見た立派な門 やはり気になる 何かを感じるのだ 綾乃は、四人に気付かれぬようにすぐに着替えて外に出た ========= 「うわぁ~立派だな~」 寺や神社などに日頃行かなくても分かる程、その門は立派だった 門には扉は無く、中に入れるようになっている 綾乃は、導かれるようにして門をくぐり、本堂と思われる方へ歩いて行った 「あ、お賽銭お賽銭」 ここまで来たのだから、お参りはするべきだ 自前の鞄から、お財布を取り出し、小銭を出す カラン コロン 目を閉じ、手をあわせる 「良い子だね」 突然声がした 若い男の声 それも、とても近くで 驚いて閉じていた目を開けると、賽銭箱に男の人が座っていた 声もでないというのは、こういう事なんだろう さっきまではいなかったはずだ 「あれ?どうしたの? そんなに驚かれちゃ、こっちもやりにくいんだけど」 知るか!驚くのが当たり前だ!と言いたいが、言えない自分がいた。 「君、自分探しをしてるの?」 「え?」 やっと声が出た しかし、なんでこの人が私の事を知っているんだ? 「君ね、絵馬掛けるだけなら良いけど、お賽銭入れられるこっちの身にもなってくれる?」 何なんだ…コイツ 「絵馬は願い事の証拠になるし、お賽銭は対価 だから、僕は君の願いを叶えなくちゃいけない」 「え?」 私の反応に、男の人はうんざりしているようだ
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

132人が本棚に入れています
本棚に追加